正義のヒーローは、人間の味方。
たま(弾丸)よりも速く現れて、
暴れる怪獣をやっつけて、
ときには宇宙へ追い返す。
だけど本当は……
* * * * * * * * * * ** * * * * * * * * *
長い冬眠から目覚めて、
ぼくはいつものように遊び場に行ったんだ。
でもそこは、知っている景色とは違っていた。
みんな、どこにいるのー?
遊ぼうよ!
どうしてこんなに静かなの?
誰もいないの?
そうか、ぼくをびっくりさせようとしてかくれてるんだな。
ぼくはきっと、かくれんぼの途中で眠ってしまったんだ。
みんなー!
もう出てきていいよー!
ぼくは辺りを探してみた。
お山を崩してみたり、
お池の中にもぐってみたり、
きれいに並んでいる、積み木のようなおもちゃを動かしてみたり、
昔一緒に遊んだ友達を探しているうちに、
面白いものが目に入ってきて、それで遊んだりもしたよ。
でも、
あれれ?
なんだかおかしいな
空気が違う…
「そこまでだ、怪獣くん!」
振り返るとそこには、ヒーローくん。
ぼくとヒーローくんの故郷は、M87銀河。
M87銀河には「光の国」と「闇の国」があって、
12年に1度、それぞれの住人が引っ越しをして入れ替わる。
ぼくとヒーローくんは、あるときその引っ越しで知り合い、友達になったんだ。
好奇心旺盛なぼくたちは、
もっと遠くのほしに遊びに行ってみたいねと、
5500万光年離れた、この地球にやってきたんだ。
地球というほしは、
「光の国」にも「闇の国」にもない自然にあふれていて、
ぼくもヒーローくんも、地球での遊びに夢中になった。
地球には、ぼくたちよりもずっと小さな「にんげん」という生き物が住んでいた。
ぼくたちは「にんげん」とも仲良くなって、よく一緒に遊んだんだ。
「暴れるのはやめろ!」
暴れるってなに?
ヒーローくん、やめてよ~!
痛いよ!
どうしちゃったの、ヒーローくん!
ぼくだよ~!
一緒に遊んだじゃないかー!
ぼくの声を無視して、ヒーローくんは何度も襲いかかってきた。
そうしてぼくをひょいっと持ち上げ、空に飛び立った。
「ありがとう!ヒーローくん!」
あとには、拍手をしながら見送る人間たちの姿。
「良かった、これで怪獣がいなくなった。」
「やっぱりヒーローくんは頼りになるね。」
「ヒーローくんは、人間の味方だよ!さすが!」
正義のヒーローは、人間の味方。
たま(弾丸)よりも速く現れて、
暴れる怪獣をやっつけて、
ときには宇宙へ追い返す。
だけど本当は、怪獣たちの仲間。
だから人間が見てないところで
「ごめんな、痛かっただろ?」
もうこのほし(地球)には、安全な遊び場はないんだよ。
人間たちはみんな、お金儲けと闘いに夢中。
ぼくたちと一緒に生きてくれる人間は、もうほとんど残っていないのさ。
だから、帰ろう。
安全な僕らのほし(惑星)へ。
ぼくはしばらく泣いていた。
ヒーローくんにやられて痛かったけど、
涙が止まらないのは、それだけではない気がした。
「また地球に遊びに行ける?」
「そうだな……、うん、たぶん…ね。」
ぼくたちは、故郷のほし(惑星)への帰路についた。
終わり
☆つぶやき☆
子どもの頃、夢中で観ていたウルトラマンシリーズ。
中でも、時折登場する「悪者ではない怪獣」の物語がとても好きでした。
怪獣になるしかなかった切ない背景が描かれたストーリーに、
「お願い!怪獣をやっつけないで!」と、泣きながら観ていたものです。
(*^_^*)
もしかしたら、怪獣はただ遊んでいただけかも知れないな・・・
そんな想いから、この物語を創ってみました。
♡挿絵について♡
フリー素材サイト「イラストAC」さんより、加工&使用しています。