夢みる冒険者たち

***ひっくり返すファンタジー***

怪獣と正義のヒーロー

 

正義のヒーローは、人間の味方。

たま(弾丸)よりも速く現れて、

暴れる怪獣をやっつけて、

ときには宇宙へ追い返す。

だけど本当は……

 

 

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長い冬眠から目覚めて、

ぼくはいつものように遊び場に行ったんだ。

でもそこは、知っている景色とは違っていた。

 

 

 


みんな、どこにいるのー?

遊ぼうよ!

どうしてこんなに静かなの?

誰もいないの?

 

 

そうか、ぼくをびっくりさせようとしてかくれてるんだな。

ぼくはきっと、かくれんぼの途中で眠ってしまったんだ。

 

 

みんなー!

もう出てきていいよー!

 

 

 

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ぼくは辺りを探してみた。

 

お山を崩してみたり、

お池の中にもぐってみたり、

きれいに並んでいる、積み木のようなおもちゃを動かしてみたり、

 

 

 

昔一緒に遊んだ友達を探しているうちに、

面白いものが目に入ってきて、それで遊んだりもしたよ。

 

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でも、

あれれ?

なんだかおかしいな

空気が違う…

 

 

「そこまでだ、怪獣くん!」

 

振り返るとそこには、ヒーローくん。

 

 

 

 

 

 

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ぼくとヒーローくんの故郷は、M87銀河。

M87銀河には「光の国」と「闇の国」があって、

12年に1度、それぞれの住人が引っ越しをして入れ替わる。

 


ぼくとヒーローくんは、あるときその引っ越しで知り合い、友達になったんだ。

 

 

 


好奇心旺盛なぼくたちは、

もっと遠くのほしに遊びに行ってみたいねと、

5500万光年離れた、この地球にやってきたんだ。

 


地球というほしは、

「光の国」にも「闇の国」にもない自然にあふれていて、

ぼくもヒーローくんも、地球での遊びに夢中になった。

 


地球には、ぼくたちよりもずっと小さな「にんげん」という生き物が住んでいた。

ぼくたちは「にんげん」とも仲良くなって、よく一緒に遊んだんだ。

 

 

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「暴れるのはやめろ!」

 


暴れるってなに?

ヒーローくん、やめてよ~!

痛いよ!

 

 

どうしちゃったの、ヒーローくん!

ぼくだよ~!

一緒に遊んだじゃないかー!

 

 


ぼくの声を無視して、ヒーローくんは何度も襲いかかってきた。

 

そうしてぼくをひょいっと持ち上げ、空に飛び立った。

 

 

 


「ありがとう!ヒーローくん!」

あとには、拍手をしながら見送る人間たちの姿。

 

「良かった、これで怪獣がいなくなった。」

「やっぱりヒーローくんは頼りになるね。」

「ヒーローくんは、人間の味方だよ!さすが!」

 

 

 

 

 

 

正義のヒーローは、人間の味方。

たま(弾丸)よりも速く現れて、

暴れる怪獣をやっつけて、

ときには宇宙へ追い返す。

 

 

だけど本当は、怪獣たちの仲間。

だから人間が見てないところで

「ごめんな、痛かっただろ?」

 


もうこのほし(地球)には、安全な遊び場はないんだよ。

人間たちはみんな、お金儲けと闘いに夢中。

ぼくたちと一緒に生きてくれる人間は、もうほとんど残っていないのさ。

 

だから、帰ろう。

安全な僕らのほし(惑星)へ。

 

 

 

ぼくはしばらく泣いていた。

ヒーローくんにやられて痛かったけど、

涙が止まらないのは、それだけではない気がした。

 

 

 

 

「また地球に遊びに行ける?」

「そうだな……、うん、たぶん…ね。」

 


ぼくたちは、故郷のほし(惑星)への帰路についた。

 

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終わり

 

 

 

 ☆つぶやき☆

子どもの頃、夢中で観ていたウルトラマンシリーズ。

中でも、時折登場する「悪者ではない怪獣」の物語がとても好きでした。

 

 怪獣になるしかなかった切ない背景が描かれたストーリーに、

「お願い!怪獣をやっつけないで!」と、泣きながら観ていたものです。

(*^_^*)

 

もしかしたら、怪獣はただ遊んでいただけかも知れないな・・・

そんな想いから、この物語を創ってみました。

 

 

♡挿絵について♡

フリー素材サイト「イラストAC」さんより、加工&使用しています。